種々雑食

好きなコトだけ。

若者の相手をした話

 先日この国では大きめな街に仕事で出かけていた。一泊二日の出張だったのだが帰りはなんとなく電車で帰ろうと思いドライバーさんには一人で帰ってもらってテクテクとターミナル駅へ。ものすごく暑い。その街から居住区まではローカル列車で2時間弱の距離だ。無論冷房もない3等車。それでもなんだかこの列車に乗るのが好きでたまに利用する。

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 駅につくと大きなリュックを背負った日本人らしき青年がキョロキョロと時刻表を眺めている。Tシャツ・短パンで汗をかきまくりながらも英語で現地のスタッフと何やら相談しているようだ。そういえば俺にもあんな頃があったなぁなどと思いながらタバコを吸いに外にでると彼はもういなくなっていた。

 自分の乗る列車のチケットを購入しホームへ向かうと先ほどの青年が立っていた。どうも自分の列車がどのホームにいるのかわからなかったらしい。俺の顔を見て英語で話しかけてきた。大丈夫、俺は日本人だよ。と言うと安堵の表情を浮かべ色々と質問してきた。

 彼曰く大学の先輩と一緒に初めて海外旅行に来たのだが先輩は小遣いをたくさん持ってきているので昼も夜も遊びまわっている。ボクは2万円しか持ってきていなくて一晩で無くなってしまった。だからホテルの人に聞いて安く遊びに行けるところはないかと聞いたらこの列車の行き先を案内された、実は一人で不安で仕方がなかった、との事。彼は大学二年生だという。20歳。話はしっかりしているしハキハキと感じが良かった。

 乗る列車は同じものだったので彼を席に案内した。自由席だからどこでもいいのだが隣があんまり悪人じゃ無さそうなところを選んだ。そのまま立ち去った俺を彼は不安そうな顔で見つめている。実はいつも列車のドア部分のステップに腰掛けている。車内の椅子に座ることは滅多にない。なぜならこの国の列車は走りだしてもドアを閉めないので風が入ってとても心地いいから。それを体験したくて列車に乗る。タバコを吸うこともできる。

 列車が走りだしたので俺はいつも通りドアのステップに座った。案の定風が気持ち良い。ふと後ろからトントンとされる。物売りかなぁと思ったらさっきの彼だった。ここに座ってるんですか?そうだよ。へー、じゃぁ俺も。と言って反対側のステップに座った。うわー、凄い!開けっ放しっすか!?怖い!でも気持ちいい!屈託なく笑いながら言う。すいません、写真撮ってもらってもいいですか?ドコモの大きなスマホを渡された。どこかのSNSにアップするのだろう。

 座ってからはどちらともなく話し始めた。俺が日本でしていたことや彼が今学校でしている研究のコト。この国の食事や女性のコト。将来何になりたいか、過去に何をしていたか。話しているとあっという間に目的地に着いた。電車を降りて別れようとも思ったのだがこのあたりの観光タクシーはボッタクリが多い。ザッと交渉して彼を引き渡した。いい時間をもらえたので観光タクシー代を奢ると彼は非常に恐縮しながらも、これで今夜もご飯喰えます!と言って笑った。最後に名前と連絡先を聞かれたのでメールアドレスを教えた。

 一週間後に彼から無事に帰国した旨、世話になった旨などのキチンとしたメールが届いた。いい気分になれたのでこちらこそ感謝している、と返信した。